現在までのコンピュータ・ネットワーク技術の進歩に伴い、オープンなインターネット上で、芸術活動の枠を広げようとするアーティストにより、さまざまなコンサートがライブ中継されたり、マルチメディアを駆使した表現などが試みられてきました。

しかし、これまでの技術、およびその活用方法では、本来のパフォーマンスそのものののクオリティをインターネット上でユーザに届けるには困難な状態にありました。また、小さなモニタの前で会場の臨場感を伝えることも極めて難しく、パフォーマンスする側としても、ネットワークを介して遠隔地に存在する観客の参加を、リアルタイムに感じることが不可能だったといえます。

そこで、最先端の技術を投与するだけではなく、構想者やアーティストの表現を実現する”手段”として、いかに技術を活用、応用していけるかを考えるところが、今回のコンピュータ・テクノロジーの導入、およびネットワークシステムを構築するにあたっての重要なポイントとなります。

オペラ"LIFE"はその構想者によるコンセプトにより、通常のライブ・コンサートのように劇場内だけの閉じた空間でパフォーマンスが行われるだけでなく、会場外の空間とのインタラクションが行われるようなシステムを必要としています。"LIFE"におけるテクノロジーの役割として、遠隔地とのコラボレーション、ライブにおける音声・映像といった大容量のデータを送出するにあたり、これまで試みられなかった以下の要素を実現するような”グローバル・ライブ コンサート”の構築を目指しています。

  • 遠隔地同士のアーティストによるコラボレーション:時間保証・同期演奏システム
  • アーティストと観客とのインタラクション:HyperBroadGathering / Webcastのシステム構成

    ネットワークによるディレイを利用したダンス・コラボレーション
    "LIFE"におけるネットワークシステムは、日本、ニューヨーク、フランクフルトに存在するダンサーたちが、それぞれのダンスに対して、インタラクションを行うことを可能にするために構築されます。

    インターネットを介し、日本会場のスクリーンに映し出されるニューヨーク、フランクフルトのダンサーの動きに合わせて、日本会場のダンサーが反応して踊ります。その踊りの映像がまた、ニューヨークとフランクフルトへ届き、日本のダンサーは、地球を一周して戻ってくる何秒か前の自分の踊りの映像を確認します。同期した時間で、遅延して戻ってくるダンサーの動きの映像に合わせて、再び各地点のダンサーが反応し、3地点で即興で行われるダンスのコラボレーションが、地球上を一周します。

    観客はネットワークの時差による、映像(ダンサーの踊り)のディレイ、および音のディレイを通して、”ランダム遅延装置としての地球”を体験することになります。